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2020-07

1284話 東野圭吾著「クスノキの番人」 - 2020.07.01 Wed

 東野圭吾著「クスノキの番人」(実業之日本社、2020.4.15、初版第3刷)を読みました。
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 タイトルから、庭師さんの話かと思われるかもしれませんが、クスノキというのは、神社の御神木で、番人というのは、その樹と祠の管理人です。
 といっても、宗教心があってその仕事をやっているわけではなく、しょうもない事情で、わけも分からないまま、とりあえず食っていけるということで住み着いたというのが、始まりです。

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   森林公園の巨木

 その樹には、ものすごいご利益があるらしいのですが、番人も読者も、最後のほうにならないと分かりません。
 その樹の力を得るには、いくつか条件があります。
◎夜
◎新月と満月の前後
◎血縁者間
など、■■■

 話としては、番人と、お祈りにやってくる人たちのやり取りが中心になります。
その中で、番人自身が成長したり、色々な秘密が明らかになっていき、最後は、■■■


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感想)
 一瞬で読めると思って、気がついたら四日経っていました。
 前半、いわば状況説明のような話が続き、退屈というよりも、認知症のテストを受けさせられているような感じで、心を掴まれてしまいました。
 血縁関係、あるいは血縁内のゴタゴタは、ひどく苦手なテーマで、全体像をつかむのにメモ用紙が必要でした。
 
 技術が進歩すると、脳内の情報をスキャンして、他人の脳にコピーできるかもしれないということですが、この小説は、そんな未来的なことを、スピリチュアルな雰囲気で見せてくれています。
 私自身、自筆遺言書を考えている中で、関係者への思いを文章化する必要があり、そんなことができれば、「行間に滲ませる」みたいな、曖昧なことが必要なくなります。副作用も大ですが・・・

 で、読後感は、すごく悲しい。血のつながりとか、老いることとか、だれでもが抱えている重いものを刺激されます。

 最後、悲しいけど、スッキリした気分で終わることができるのは、さすが

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おまけ)
 看板の上の仲の良い烏

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 移動して、池のほとりでも
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 ムクドリ達
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1271話 小川 糸著 「ライオンのおやつ」・・・気持ち良く旅立って行く人々に拍手 - 2020.05.13 Wed

 小川 糸著 「ライオンのおやつ」を読みました。
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 (いわゆる腰巻のデザインと広告文(コピー)が好きじゃないので、外して写しました)

 若くしてホスピスに入った女性の視点で書かれています。
(ホスピスは、死期が迫った患者が、あちらの世界に至るまでの中継地点のようなところです)

 そういうと、暗くて悲惨な話になりそうですが、とんでもなく明るく楽しい世界が描かれています。


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 すぐにワンコと暮らすことになりますし、

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 瀬戸内の小さな島にあるホスピスは、海と柑橘林に囲まれた絶景の中にありますので、光に包まれたリゾートみたいな気分かな。
 さらに、ブドウ畑を営む村の青年とも仲良しになり、デートに出かけることも。


 ただ、どうでもいいんですけど、犬の描写が、いっぱいあるのに、犬種が分かりません。あえて書かないのでしょうね。
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表紙を拡大しても、白い小型犬ということしか分かりません。

 女性の生い立ちから、ホスピス入居までのいきさつの中には、多少の毒はありますが、あとは、威張った爺さん患者の起こすトラブル程度で、悪いヤツが登場しません。
 
 病気の苦しみは、モルヒネワインやモルヒネを躊躇なく摂っているので、ほとんで感じずに旅立ちを迎えることになります。

 楽しみは、日曜の午後にあるおやつの時間です。

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感想)
 主人公は、ガンのステージがⅣですが、私は、それ以下です(忘れました)。
とはいえ、自分自身が入居者になったような感覚で読んでいました。
 全てを肯定してくれる人々(ペコパか!)、夢のような環境、
ぜひ入居したいおとぎの国として。

 理想化しすぎだという意見もあるでしょうし、最後の方で、人々が、生死の境目を超えて、行き来している状況は、違和感を覚える読者もいるかもしれません。
 そんな人には、これは小川糸にしか書けない美しいメルヘンなんだと言ってやりたい。

 最近、身近な人を失った方、生きるのに疲れた方、お菓子作りに行き詰った方に、ぜひ、お勧めします。

1247話 古川真人著「背高泡立草」(第162回芥川賞) - 2020.02.13 Thu

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 文藝春秋三月号掲載の古川真人著「背高泡立草」(第162回芥川賞)を読みました。(右側の記事などもあって、¥909は安い)

 幹となっているのは、故郷の使われていない納屋のまわりの雑草を、子や孫が集まって刈り取るという、さしてドラマ性のない話。
納屋が島にあり、皆バラバラで遠くに住んでいるので、集まるだけでも大変なことは分かるが・・・

 と思っていると、太字小見出のあと、話の時空が突然切り替わる。
時間軸については、戦前であったり、終戦直後であったり、ズゥ~と昔の話だったり、空間については、満州、北海道、九州に及ぶ。 見出しが説明的でないので、慣れるまでは脳がよじれた。

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 家族と、その納屋の結びつきは、時空が異なるパートを読むことで分かってくる。
 さらに、家族の歴史も知ることになる、波乱のファミリーヒストリーが展開されている。
 鯨の話、大陸からの逃避行も面白いが、中学生がカヌーで島を出る話が、全体の統合を壊しかねないものの、私は好きだ。

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(内容に関係なし、森林公園に埋め込まれた銘板・・・押すとストーリーが出てきそう)
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(これは、瀬戸の住宅地の道路で見つけた)
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 作家としての作者の力量はよく分かるし、映像表現のシナリオと見ても迫力があるのですが、小説としては少し不満が残ります。
 やはりストーリーの切り替えが唐突過ぎます。
なにか、つなぐための手法の発明が要るのではないでしょうか。
陳腐かもしれませんが、納屋から出てきた一枚の写真とか、手紙、メモ、伝票、日記など、場面転換へのきっかけに使えないでしょうか。(古い?)
 三十二歳ですし、受賞第一作に期待。

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1243話 ユヴェル・ノア・ハラリ著「21Lessons」 - 2020.01.31 Fri

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 ユヴェル・ノア・ハラリ著「21Lessons(21世紀の人類のための21の思考)」柴田裕之訳、[21LESSONS FOR THE 21stCENTURY]、河出書房新社、(2019年11月30日初版)を、少し前に読み終えました。
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 邦題など、本の売り方には疑問がありましたが、「サピエンス全史」、「ホモ・デウス」と読んできた流れで、ホイホイと買ってしまいました。
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 「サピエンス全史」は、大きなスケールの、いわば、神の視点から見た人類史ですし、「ホモ・デウス」は、さらに未来の世界を展望していますよね。(ざっくりと言い過ぎ?)
 それに対して、この本では、「現在」を考えています。

(なお、すごい先生方が、きちんとした論評をされていると思うので、ここでは、あくまで雑感ということで書かせていただきます、というか、それしかできない)

 当然、トランプ大統領やイギリスのEU離脱の話が出てきますし、日本のはなしも、そこそこ出てきて、「だよね~」と相づちを打ちながら読み進められました。
 
 短期的で局所的な、損得勘定のようなことではなく、長期的で広い視野で考えるとこうだということを、歯に衣着せぬ表現で書いてあるので、痛快です。

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 たとえば、選挙とか国民投票という制度は、「選挙民が一番正しいという前提に立っている」と突き付けてくる。原理原則は、そういうことだが、現実はどうか。トランプ大統領を誕生させ、ブレグジットを成立させてしまったのも投票ですから。
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 AIやビッグデータの活用、バイオテクノロジー(人体改造)の進展が、さほど時間をかけずに身近なものとなり、不要な人間が大半を占めるようになった社会が近づいている。そのことの考察に、かなりのページを費やしている。
 そうなった社会でも、戦争を始めるバカの力は強大だとみている。

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 すごく共感できる内容ですが、「移民」の問題は、正直、よく分かりません。いま住んでいるところは、町内会の組長がインド方面?の人だったりしますが、何の問題も聞こえてきません。こちらに合わせておられるのでしょう。

 最終的には、移民とか言わずに一体化してゆくのか? しかし、EUも危うくなっていますし・・・
文化の衝突か融合か? どうなるか、わかりまへん???

 21Lessonsで、私が何とか単位が取れそうなのは、半分以下かな。トホホ

1240話 こまつ座公演「イヌの仇討」 - 2020.01.24 Fri

 名演1月例会で、こまつ座公演「イヌの仇討」を観ました。
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出演者)
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(注:三田和代さんは体調不良のためお休みで、西山水木さんが代役を務められました)
吉良上野介:大谷亮介
大須賀治部右衛門:田鍋謙一郎、清水一学:植木純米
榊原平左衛門:俵木籐汰
お吟さま:彩吹真央
お三さま(女中頭):西山水木、砥石小僧新助(盗人):原口健太郎
おしの:尾身美詞、おしん:大手 忍
牧野春斎(茶坊主):石原由宇

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どんなはなし)
 変なタイトルですが、赤穂浪士討ち入りの話です。
 ただし、赤穂浪士側ではなく、吉良上野介側に密着したかたちの演劇となっています。
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 討ち入りの当日、すでに吉良上野介と側近が、物置に隠れているところから始まる。

 上野介が逃げ込んでいる物置に、「お犬様」も連れられている。なにせ犬公方様からの拝領ものですから。

 すこし落ち着いたところで、上野介の疑問が広がる。「なんで私が討たれなきゃならないの」「そもそも、悪いのは浅野でしょ」みたいな・・・
 そこから謎解きが始まる。
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 賄賂が少なかったのでいじめた説、製塩で競合説、パワハラ説、いずれも明解に、あり得ないことが示される。

 結局は、刃傷事件の原因は、浅野内匠頭の精神障害が主因という見立てだ。
 ここまでは、今日の定説となっているが・・・

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 井上ひさしは、そこから一歩深堀をする。
普通の忠臣蔵には絶対登場しない「泥棒さん」や「お犬様」など、物置に逃げ込んだ多くの登場人物を使って。

 なぜ、私(吉良)は嫌われたのか
「そもそも、生類憐みの令や、経済政策の失敗により、幕府への不満が高まっていた」
「松の廊下事件の処分が不公平とみなされ、不満の対象である権力側・将軍側(の犬)とみなされた」

 大石は、なぜ私(吉良)を討ちたいのか
「なんら実利がないはずだ」

 そこで私(吉良)は気がついた
「大石がやりたいのは、将軍への仕返しだ」
「私(吉良)は、将軍の身代わりだ」「私を殺すことで、将軍のメンツをつぶすことができる」

 私(吉良)自身、屋敷を郊外に移されるなど、将軍から見放されたようだ。こうなれば、大石のたくらみに乗ってやろう。

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稽古風景)
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感想)
 ともかくマシンガントークの連続です。チョット噛んでも芝居が成立しません。役者さんの技量に脱帽です。
 さらに、物置の中だけという、動きにくい、厳しい設定で、音声情報と、視覚情報のバランスがおかしくなりそうなところを、お犬様や茶坊主、泥棒が風穴をあけて演劇の世界に連れ戻してくれました。
 観ているときよりも後になって、じわじわと感動が湧いてくるような演劇です。(落語にもありますが)
 一方で、一人芝居とは言いませんが、もっと出演者を減らし、小さな劇場で観てみたい気もしました。

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プロフィール

dadebeso

Author:dadebeso
愛知県尾張東部在住. 宗教的なものではありませんが,場所の持つ力に関心があります.また,ものごとの起きるタイミングという意味での時の力にも関心があります.そのほか,落語,オーディオは,子供のころからの趣味です.

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